器狂い
埼玉の実家から、ミョウガが送られてきました。
昼過ぎ、母にお礼の電話をしたところ
それはそれは気怠い声が返ってきました。
暑くて暑くてしょうがないようです。
電話を通してむっとした空気を感じました。
それで思い出したこと、ひとつ。
私は器を作るのも好きですが、買うのも大好きです。
川越に、いいものが集まることで知られる骨董市があり
夏の盛りに行ったことがあります。
一枚の美しい染付の皿が目に飛びこんできました。
おじさんに声をかけ、時代を聞いたところ
「隋」
え?
は?
遣隋使とかの隋?
びっくりして値段を聞くと、低い声で「7000円」
おじさん、それ以外はだんまり沈黙・・・
雲ひとつない真っ青な空、頭の上から強い日差しをうけ
深い陰になった顔色をうかがうことはできない。
値段はまあ、そんなもんかな、と思いました。
でも、「隋」の、あまりのあり得なさに呆気にとられ
その上、うだるような暑さに体力も思考能力も奪われ
なにもかも面倒になり、その場を立ち去ってしまったのです。
でも・・・今でもその状況がありありと思い出されるのは
惜しい買物だったからです。
隋とかそんなことは関係なく、本当に美しい一枚でした。
それ以来です。
これ!と思った器を躊躇なく買うようになったのは。
今から10年ほど前の話です。